村上春樹
現代日本を代表する世界的作家。「ノルウェイの森」、「海辺のカフカ」、「1Q84」など、多くのベストセラー作品を持つ。ジャズ喫茶を経営していた経験があり、音楽の影響を強く受けた文体や、都会的な感覚が特徴。海外文学の影響も受け、翻訳も多数手がけています。独特の比喩表現や、夢と現実が交錯するような世界観が、特に若い世代から圧倒的な支持を得ています。
言葉というのは
心を伝えるためのものではなく
心を隠すためのものかもしれない
大切なのは
自分が何を失ったかではなく
何を持っているかだ
人生は
暗いトンネルを抜けるようなものだ
出口が見えなくても
進み続けなければならない
物語というのは
僕らを安全な場所に
運んでくれると同時に
危険な場所にも運んでくれる
孤独というのは
人が生きている限り
決して避けることのできない
基本的な条件みたいなものだ
失われた時を求めて
と人は言うけれど
実際には失われていない
ただ見えなくなっているだけだ
時間というのは
ナイフみたいなものだ
不注意に使えば
傷つく
時間をかけて書かれたものは
時間をかけて読まれるべきだ
人は自分が考えているほど
強くはないし
同時に考えているほど
弱くもない
僕らはみんな
多かれ少なかれ
何かを失いながら生きている
そして失ったもののために
いつまでも哀しんでいる
もし僕らが
言葉を持たないとしたら
僕らは何について
考えることができるだろう?
完璧な文章などといったものは
存在しない
完璧な絶望が
存在しないようにね